持たない幸福論(著:pha)|自分にとっての幸せを考える

2026年2月1日

初めて図書館で借りて読んだときは、非常に衝撃を受けたのを覚えている。で、数年経った後、改めて文庫版を購入し、読んでみた。

結果、現代にも通じる内容で非常に面白いし、自分が感じていた「生きづらさ」の理由を、すべて言語化してくれているように思えた。

読んだからといって、自分の中の苦しさが消えてなくなるわけではない。ただ、漠然とした不安の原因が分かると安心するのと同じように、自分の中にある苦しさの正体を把握し、対処の仕方を考えるきっかけとなった。全体を通じて、生活全般、ひいては、生き方に影響を受けていると言っていいかもしれない。

副題にあるとおり「働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない」というメッセージのもと、Phaさん自身が経験を通じて感じたこと、実践したことをゆるく語っている。その「ゆるさ」がPhaさんの魅力でもあり、同じような価値観を持った人に深く刺さり、注目を集めたのだと思う。

世の中は確実に少しずつ良くなっているけど、世の中は少しずつしか変わっていかない。 P206

昭和の頃は「24時間働けますか?」みたいなキャッチコピーを掲げた栄養ドリンクのCMがあったように、一生懸命働き、お金を稼ぎ、出世し、結婚し、家庭を築き、定年退職し、老後は退職金をもとにのんびり暮らす…みたいな人生モデルがあった。けれど、今はさすがにそのような価値観を強要する空気も薄まってきた。

もちろん、完全に無くなったわけでもなくて、多くの人が気付かないうちに、「フツウの人は〜」みたいな幻想に縛られているのも事実だとは思う。だとしても、昭和や平成初期の頃よりは、ずいぶんマシになったなと、平成初期生まれの僕は思っている。

僕は「自分にとって幸せを感じられるのは何か」という自分にとっての価値基準を考えた結果として「お金よりものんびりできる時間のほうが大事だな」と思ったので、今のようなあまりお金を稼がない暮らしをしている。 P138

つまり、自分にとっての「豊かさ」を自分で決めたり、把握しないかぎり、世間からどんどん消費させられてしまうというわけだ。

生活のあらゆる場所で、こんなゲーム売ってますよ!とか、こんなにカッコイイ・かわいい服ありますよ!とか、こんなに美味しいハンバーガー売ってますよ!とか、こんなに面白いイベント開催しますよ!とか、あの手この手で僕達を誘い、お金を使わせようとしてくる。

もちろん、それでお金を実際に使い、満足するのは各人の自由なんだけれど、そのような勧誘にいちいち反応して付き合っていたら、いくらお金を稼いでも足りないし、時間も足りない。

すると、自分にとって本当にそれ必要?という根本的かつ一番重要な問いを考える時間すら設けることができなくなってしまう。

なので、普段の生活の中で、少しの時間でもいいから、ネットやテレビから離れ、自分の心の状態だったり、大切にしたいことは何か?という問いと向き合うことは必須に思える。

結局、働いてお金を稼いでも何かが足りない、と虚しさ感じるのは、自分がいったい何に対して幸せを感じて、何をしているときに時間を忘れて楽しめるのか、という問いを考えないままに世間に消費・消耗させられているからなのだと、本書を通じて痛感した。

自分が自分の判断で自由に操作できる小さな世界を必要としているし、その中で自分で考えて何か変化を作っていくことに楽しさを感じる。P57

幸いにも、僕はこうして文章を書いたり、本を読んだりすることが楽しいし、やっていて充実感を得られるし、幸せを感じる。その事実に30代なかばにして気がつくことができた。

なにより、Phaさんの本に触れたこと自体が、自分の中の「大切なもの」に気づくきっかけになっている。

そのように考えると、自分の生き方を自分で考える必要性が増している現代において、読書がもたらす効能は大きい。

世界の多様な文化や他者の多様な価値観は自分の固定概念を揺さぶり、いい意味でほぐしてくれる。それはつまり「生きづらさからの解放」に繋がる可能性を大いに含んでいる。


書籍はこちら↓

持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない(著:pha)